糺の森のアルキオーネ

ただすの もりの あるきおーね

20. ウクレレの響きに呼び覚まされるもの

 

19.あなたが私のツインソウルですか?⑤

http://maysyun.hatenablog.com/entry/2019/07/05/132113

 

 

地方のデパートでは

よく 夏の催し物として

ハワイアンフェアをやる。

 

 

フラのパウスカートなど、田舎に

普段は あまり売っていないものだから

ちょっと覗きに行くのが

町のフラ教室に通うわたしの

毎年の小さな楽しみでもある。

 

 

かわいいパウスカートあるといいな。

パイナップルのクッキーも

売ってるといいな。

そんな気持ちで 訪ねた5階の大催事場。

 

 

何よりも先に 目についたのは

去年までは なかった

ウクレレコーナーだった。

 

 

一番端で 閑散としている

と言ったら

もしかしたら語弊があるかもしれない。

だって 今は 閉店間際。

昼間は、ミニウクレレ教室で

賑わっていたことだろう。

 

 

側で見たい気持ちを尻目に

衣類コーナーを ひと回りふた回り

 

 

でもやはり、もう気もそぞろで

 

 

意を決してウクレレコーナーに

足を踏み入れる。

 

 

「見せてください」

 

 

「どうぞどうぞ どれでも

お手に取って 音を聞いてください」

 

 

暇そうだった店主は

満面の笑みで促してくれる。

 

 

音を鳴らしてみたい。

なのに

気持ちを やはり

抑えている自分がいる。 

 

 

それを感じながら

ウクレレ達の前に じっと立ち尽くす。

 

 

「さあどうぞ。

この椅子にかけて

弾いてみてください」

 

 

店主は、さも当たり前のように

ひとつのウクレレを差し出し

持たせるので

 

 

 

私は

観念して腰を下ろした。

 

ポロン と

 

そっとつま弾くと

なぜか 嬉しい気持ちが

ふわっと こみあげる。

 

 

いい音…

思った以上に。

 

 

「これは、この中では

一番お安くて

初心者用なんですよ」

 

 

「でも

すごく響きが

いいような気がします」

 

 

「ええ、日本のメーカーなんですよ。

私が選びました。

初めての方にも 中国製ではなくて

日本製の 正確な音で 

弾いていただきたいと思いましてね

 

こちらの ひと回り大きい

コンサート用も 試してみてください」

 

 

もちろん、最初から

それが気になっていたけれど…

 

手に取るのを

なぜかまた 躊躇するが

店主がまた 

すでに差し出して

くれているので

 

 

抱えてみる。

あ、絶対こっちの方が

弾きやすい。

きっと音もいい。

 

 

音を出すと

 

 

なんだか もう

たまらない気持ちになる。

 

 

私ヘンだ(笑)

なんだ この精神状態は。

 

 

ひとしきり 

音を出して遊ぶ。

この子連れて帰りたい。

7万。

 

 

 

店主が、他のお客さんを

気にしたタイミングを見て

逃げるように コーナーを後にする。

 

 

急いで 車に戻り

エンジンをかけて

アクセルを踏むと同時に

 

 

ぶわっと涙がこみあげてきた。

 

おお!と思いながら

 

なるほど。

そうか。

さもありなん。

 

 

ウクレレは胸の前に

ぴったり抱えるから

ハートに直に響いてしまうんだ。

 

背中に突き抜けるように

胸の中心から響いたその音は

たぶん

たぶん

 

ウクレレ】という楽器の

共通の周波数を介して

あまねく地表に広がっている

ウクレレにのせたその人の感情も

連れてきてしまうのだろう。

 

普段 抑えていた感情が

こんなに大量にあったことに

我ながら驚く。 

 

 

 

これは 私のものだろうか

私のものなのだろうか

 

 

 

 

ウクレレを介さずとも

実は いつも繋がっている。

 

 

でもそれを いつもは

そっと そっと

すでに 表面張力でギリギリなものを

零さないように

零さないように

 

 

自分に集中して保っているものを

 

 

大きく響かせてしまったら

 

 

 

それは 溢れ出してしまうに

決まっているじゃないか

 

21.Hiloの街

http://maysyun.hatenablog.com/entry/2019/08/02/232450

 

 

 

#ウクレレ